消化管出血に関連した臨床研究 | 東京大学消化器内科消化管グループ
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急性下部消化管出血患者に対する緊急下部内視鏡検査の出血源同定率の有効性を検討する無作為化割付比試験

1.研究課題名

急性下部消化管出血患者に対する緊急下部内視鏡検査の出血源同定率の有効性を検討する多施設無作為化割付比較試験(UMIN000021129)(NCT03098173)

 

2.目的

急性下部消化管出血患者において、無作為化割付を行い、緊急下部内視鏡検査群の出血源同定率が待機的下部内視鏡検査群と比較して上昇するかを検証する。

 

3.試験の概説

本邦において、重篤で入院加療を要する急性下部消化管出血患者は増加している。下部内視鏡検査は、急性下部消化管出血の診療において優れた検査法であり、診断と治療を同時に行うことができる。急性下部消化管出血の診療における最も重要な問題の1つは、最初の出血から48時間以内に10-40%の患者が再出血を起こすことである。これは、出血源の同定を正確に行うことができず、有効な内視鏡的止血処置を行うことができないためである。もし、出血源を正確に同定することができれば、効果的な内視鏡的止血処置を行うことができ、それに伴い、再出血の予防など重要な臨床転帰を改善することができる可能性がある。しかし、出血源を同定することは難しい。これまでの所、確実に出血源を同定することができる方法はないが、下部内視鏡検査を行うタイミングは、出血源同定率に大きく影響している可能性が示唆されている。下部内視鏡検査を行うタイミングは、血便または下血を発症して、医療機関に受診後24時間以内に行う緊急下部内視鏡検査、それ以降4日以内に行われる待機的下部内視鏡検査がある。どちらのタイミングが、患者のアウトカム(出血源同定率、止血成功率)を改善させるのに最適であるか、結論がでていない。本試験は、日本全国の病院が参加し、血便または下血を来した患者を緊急下部内視鏡検査群と待機的下部内視鏡検査群に無作為割付を行い、両群の出血源同定率を比較して緊急下部内視鏡検査の有効性を評価することが主な目的である。さらに、重要な臨床アウトカムである内視鏡治療完遂率、濃厚赤血球の輸血、入院期間、30日以内の再出血の有無を調べて、両群間での違いを評価する。

 

4.対象患者

(1)選択基準:以下の基準を全て満たす者を対象とする。

① 試験参加の24時間以内に血便または下血を来して受診した外来患

者で入院加療を要する者。

② 以下の定義のうち1つ以上の項目を満たす者。

1)試験参加の8時間以内に3()以上の血便または下血を来す。

2)試験参加前に一時的に出血性ショック*の状態になる。

3)厚生労働省が定めた指針**に則り、濃厚赤血球製剤の輸血を要する。

③ 同意取得時において年齢が20歳以上の者。

④ 本試験の参加にあたり十分な説明を受けた後、十分な理解の上、

患者本人の自由意思による文書同意が得られた者。

(2)除外基準:以下のいずれかに抵触する患者は本試験に組み入れないこととする。

① 吐血、黒色吐物、タール便を認める者。

② 下血の患者に対しては、問診や診察により、上部消化管出血の可能性が否定できない場合には、必要に応じて、経鼻胃管を挿入し胃内に新鮮血液の貯留を確認された者、もしくは、上部内視鏡検査を施行し上部消化管出血と診断された者。

③ 経口腸管洗浄液を内服することができない者。

④ 血便または下血で受診してから、試験参加前に腹部CT検査が施行された者。

⑤ 10日以内に活動性の上部消化管潰瘍と診断されている者。

⑥ 潰瘍性大腸炎、クローン病と診断されている者。

⑦ 10日以内に腹部外科手術を受けた者。

⑧ 10日以内に内視鏡的大腸ポリペクトミー切除術、内視鏡的大腸粘膜切除術、内視鏡的大腸粘膜下層剥離術を受けた者。

⑨ 腸管穿孔、腹膜炎が疑われる者。

⑩ 腸閉塞が疑われる者。

⑪ 補液、輸血を行っても、出血性ショック*が改善しない者。

⑫ 大腸全摘術を受けた者。

⑬ 播種性血管内凝固症候群が疑われる者。

⑭ 悪性腫瘍の病状が終末期の者。

⑮ 重篤な心不全を来している者。

⑯ 試験参加時に活動性の血栓塞栓症(不安定狭心症、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺梗塞)がある者。

⑰ 重篤な呼吸不全を来している者。

⑱ 妊娠中あるいは妊娠の可能性がある女性。

⑲ その他、試験責任(分担)医師が被験者として不適当と判断した者。

*冷や汗、嘔気、失神のいずれかの症状または、収縮期血圧が90mmHg下になる場合と定義する。

**輸血療法の実施に関する指針及び血液製剤の使用指針。

 

5.介入方法

(1)緊急下部内視鏡検査群

患者が受診後に、24時間以内に、経口腸管洗浄液の内服による腸管洗浄を行った後に、下部内視鏡検査を行う。

(2)待機的下部内視鏡検査群

患者が受診後に、24時間後96時間以内に、経口腸管洗浄液の内服による腸管洗浄を行った後に、下部内視鏡検査を行う。

待機的下部内視鏡検査群に割付けられた患者が、下部内視鏡検査前に出血が持続しかつ、以下のいずれかの状態になった場合には、これらの患者に対して、割付を逸脱して、必要な下部内視鏡検査、止血治療を行う。

i)輸液や輸血を行っても、出血性ショックが出現する。

ii)濃厚赤血球の輸血を6単位以上要する。

 

6.アウトカム

(1)主要評価項目

下部消化管の出血源同定率。

出血源同定の定義は、病変部(大腸憩室、大腸腫瘍、大腸潰瘍、痔核、血管異形成、ポリープ等)から活動性の出血、露出血管、もしくは血餅の付着を認めた場合とする。

 

(2)副次評価項目

下部内視鏡治療完遂率(下部内視鏡検査を受けた患者のうち、下部内視鏡治療が行うことができた患者の割合)、追加内視鏡検査率、interventional radiologyによる止血を要した割合、外科手術による止血を要した割合、30日以内再出血率、入院期間中の輸血使用(輸血は、厚生労働省が定める“輸血療法の実施に関する指針及び血液製剤の使用指針に基づいて血液ヘモグロビン7g/dl以下の場合に行う)、入院期間、30日以内血栓塞栓症率、30日以内死亡率、前処置に関連した有害事象(嘔気、嘔吐、腹痛、心不全、誤嚥性肺炎、出血性ショックの出現、出血、イレウス)、下部内視鏡検査に関連した有害事象(出血性ショック、腸管穿孔)。

 

7.データ収集の期間

(1)主要評価項目の評価は、各施設が下部内視鏡検査後直ちに行う。Inter-observer agreementを評価するために、各施設で撮影された1枚以上の下部内視鏡静止画写真に基づく中央判定を独立効果判定委員会にて行う。

 

(2)副次評価項目の評価(下部内視鏡治療完遂率、追加内視鏡検査率、interventional radiology率、外科手術率、入院期間中の輸血率、入院期間、前処置に関連した有害事象(嘔気、嘔吐、腹痛、心不全、誤嚥性肺炎、出血性ショックの出現、イレウス)、下部内視鏡検査に関連した有害事象(出血性ショック、腸管穿孔)は、下部内視鏡検査24時間以内に調査を行う。30日以内再出血、30日以内血栓塞栓症、30日以内死亡の有無は試験参加後30日の時点で外来を受診の際に調査する。

 

(3)サブグループ解析

本試験は、出血源同定に寄与する以下の因子について、サブグループ解析を行う。腸管洗浄の中止の有無、出血源が大腸憩室出血、下部内視鏡治療施行の有無、出血源が大腸憩室出血で下部内視鏡治療施行の有無、下部内視鏡検査施行医がexpert colonoscopistsのみで検査を施行したか、参加施設、血便または下血が発症してから24時間以内に下部内視鏡検査を施行したか。

 

8.研究デザイン

多施設共同非盲検並行群間無作為化割付比較試験(緊急下部内視鏡検査群と待機的下部内視鏡検査群で11割付)。

 

9.研究組織

東京大学医学部附属病院 消化器内科

国立国際医療研究センター病院 消化器内科

石川県立中央病院 消化器内科

聖路加国際病院  消化器内科

国立国際医療研究センター国府台病院 消化器・肝臓内科

小樽掖済会病院 消化器内科

市立豊中病院 消化器内科

国立病院機構函館病院 消化器科

斗南病院 消化器内科

福井県立病院 消化器内科

弘前大学医学部附属病院 光学医療診療部

愛知県がんセンター 消化器内科

長崎みなとメディカルセンター市民病院 消化器内科

周東総合病院 消化器内科

地域医療機能推進機構大阪病院 内視鏡センター

 

10.試験実施期間

    臨床試験審査委員会承認日から平成3154日(登録締切平成31331日)。

   
    11.試験実施計画書変更履歴

実施計画書第3版
 (2016年1月21日)

実施計画書第4版 (2016年3月2日)

実施計画書第5版
 (2016年4月20日)

 実施計画書第6版 (2016年6月9日)

 実施計画書第7版(最新版) (2017年4月20日)


PROTOCOL SUMMARY

Title:A multi-center randomized controlled trial comparing early versus elective colonoscopy in outpatients with acute lower gastrointestinal bleeding.

Précis: This multi-center, randomized controlled trial study is planned to include 162 outpatients with onset of acute lower gastrointestinal bleeding to compare the rate of identification of stigmata of recent hemorrhage (SRH), and other clinical outcomes, including the 30-day rebleeding rate, between ‘early’ colonoscopy, performed within 24 h of arrival at the hospital and ‘elective’ colonoscopy, within 96 h.

Objectives

Primary Objective: To evaluate whether early colonoscopy improved the identification rate of SRH versus elective colonoscopy.

Secondary Objectives: To evaluate whether early colonoscopy improved clinical outcomes, including 30-day rebleeding, success rate of endoscopic treatment, need for additional endoscopic examinations, need for interventional radiology, need for surgery, need for transfusion during hospitalization, length of stay, 30-day thrombosis events, and 30-day mortality, compared with elective colonoscopy.

Endpoints

Primary Endpoint: Identification of SRH

Secondary Endpoints: Thirty-day rebleeding, success rate of endoscopic treatment, need for additional endoscopic examination, need for interventional radiology, need for surgery, need for transfusion during hospitalization, length of stay, 30-day thrombosis events, 30-day mortality, preparation-related adverse events, and colonoscopy-related adverse events.

Population: In total, 162 males or females aged ≥ 20 years presenting with moderate-to-severe hematochezia or melena within 24 h of arrival at 15 Japanese hospitals.

Number of Sites Enrolling Participants: 15

Description of Study Participants: Males or Females aged 20 years, presenting with moderate-to-severe hematochezia or melena within 24 h of arrival at a hospital.

Describe the intervention: Early colonoscopy is performed within 24 h of the initial visit. All colonoscopies are performed using an electronic video endoscope after full bowel preparation. An enema is performed in patients who have not completely consumed the polyethylene glycol solution.

Study Duration: 3 years

Participant Duration: 30 days

Study Protocol (version 6.0)


Study Protocol (version 7.0)

Study Protcol (version 7.1)

当院にて急性消化管出血でご加療された方へ

当院消化器内科では、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 消化器内科、聖路加国際病院 消化器内科と共同で、「多施設データベース構築による消化管出血患者のClinical outcome調査:多施設共同後ろ向き観察研究」を行っております。

 

【研究の対象となる方】

20091月 ~ 20171月までに各施設において消化管出血にて入院した20歳以上の方。

 

【研究の意義】

吐血・黒色便や血便を呈する消化管出血は、時に重症化し、生命の危機となる可能性があります。現在、どのような患者さんが重篤な出血を起こすのか、またどのような検査や治療が診断や重篤な出血予防につながるかは十分に分かっておりません。そして多くの施設で消化管出血の診療が行われている中、汎用化できる診療指針が求められています。そこで今回、複数の病院の情報を用いて、診断や重篤な出血と関連する臨床因子や検査を抽出するために臨床研究を行わせて頂くことになりました。

 

【研究の目的】

消化管出血で入院した患者さんのうち、どのような患者さんが重篤な出血を来すのか、またどのような臨床因子や検査が診断や治療につながるのかを明らかにすることです。

 

【研究の方法】

この研究は多施設共同後ろ向き観察研究というもので、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に則り、東京大学医学部倫理委員会の承認のうえ実施されます。

上記の対象となった方の診療録から患者背景、臨床像、薬剤内服歴、血液検査所見、内視鏡所見、CT所見、臨床転帰(診断、再出血、入院期間、血栓塞栓症、死亡)を調査し、これらの臨床転帰と関連する因子を統計学的に調べます。各施設で得られたデータは、個人情報が特定されないよう管理し、国立国際医療研究センターに集約されます。そのうち当院での研究に必要なデータが、パスワード付きのCD-ROMまたは電子メールで当院に提供されます。

特に患者さんに新たにご負担いただくことはありません。

この研究のためにご自分のデータを使用してほしくない場合は主治医にお伝えいただくか、下記の問い合わせ先まで20171030までに御連絡ください。ご連絡をいただかなかった場合、ご了承いただいたものとさせて頂きます。

研究結果は、個人が特定出来ない形式で学会等で発表されます。収集したデータは厳重な管理のもと、研究終了後5年間保存されます。なお研究データを統計データとしてまとめたものについてはお問い合わせがあれば開示いたします。下記までご連絡ください。ご不明な点がありましたら主治医または研究事務局へお尋ねください。

20174

 

【研究機関名】

主任研究機関:東京大学医学部附属病院 消化器内科

研究責任医師:山田 篤生

 

本研究は、東京大学大学院医学系研究科消化器内科学講座の研究費を用いて実施します。本研究の研究代表者および研究分担医師には開示すべき利益相反はありません。本研究に関して、開示すべき利益相反関係はありません。

 

【問い合わせ、苦情等の連絡先】

東京大学医学部附属病院 消化器内科 助教 山田 篤生

住所:東京都文京区本郷7-3-1

電話:03-3815-5411(内線:33070)  FAX03-5800-8812

Eメールでのお問い合わせ:yamada-a@umin.ac.jp

医療機関名 東京大学医学部附属病院

診療科名 消化器内科 診療科責任者名 小池 和彦

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