拡大~超拡大内視鏡や特殊光内視鏡を用いた診断学の改良と開発
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消化管腫瘍存在診断に対する内視鏡画像強調機能の有効性の評価

消化管に発生する腫瘍(主に癌など)に対して行う内視鏡は、これまでは通常の光である白色光を使った観察によって、腫瘍を発見すること(存在診断)、腫瘍と非腫瘍を鑑別すること(質的診断)、腫瘍の深さ・範囲の診断(量的・範囲診断)などを行ってきました。しかし、近年、NBINarrow Band Imaging)と呼ばれる光の成分の一部を使用した特殊な光を使用した機能(光デジタル法による画像強調機能)を用いることで質的診断や量的・範囲診断をこれまでよりも正確に行うことができるようになっており、臨床で広く普及しています。しかし、NBIは暗い画像であることから、広い胃の中で腫瘍を発見すること(存在診断)には不適と考えられてきました。そのような状況のなか、内視鏡システムの改善や開発に伴い、より明るいNBIやそれに類似した明るい光デジタル法による画像強調機能(BLI, i-scan OE)が臨床で使用できるようになり、胃腫瘍に対する存在診断に対する有効性が期待されています。

そこで、当院では、これまでの白色光による観察と、新しいNBI, BLI, i-scan OEなどの画像強調機能による観察で、上部消化管腫瘍の発見率を改善することができるかどうかを試験を行っています(UMIN000011139)。


(小田島慎也
白色光による表在型食道癌 認識自体が困難
NBIによる表在型食道癌 茶褐色の領域として認識しやすくなっている

早期胃癌・食道癌の範囲診断における色素内視鏡と特殊光内視鏡の比較の前向き研究

従来胃癌の存在している範囲を診断するには、食道ではルゴール液、胃ではインジゴカルミンという色素をまき(色素内視鏡)、染まらない、もしくは色がはじいた領域を癌と診断して、癌治療の範囲を決定していました。しかし、NBINarrow Band Imaging)と呼ばれる光の成分の一部を使用した内視鏡観察を用いることで腫瘍の表面の構造や血管の走行を観察することができるようになり、これらの機能を拡大内視鏡(拡大観察ができる内視鏡)と併用することで腫瘍範囲を正確に診断することができると考えられていました。しかし、実際それが正確な腫瘍の境界なのか、従来使われてきた色素内視鏡と比較して範囲を正確に認識しているのかはわかっていないため、当院では、食道、胃腫瘍で内視鏡治療予定の患者さんに同意をいただいて、NBIと色素内視鏡の範囲診断率を比較する試験を行っています(食道:UMIN000007640、胃:UMIN000007641)。
 
(平山慈子、小田島慎也)

胃癌の画像 胃癌の範囲はわかりにくい。
NBIを拡大内視鏡と併用した画像。構造の変化や血管の変化などを観察して、腫瘍の境界が明瞭になっている。

消化管癌における癌特異的蛍光プローブの有用性の検討

消化器内視鏡の性能は日々進化しており、現在ではかなりの高画質の画像を得られる上NBIなどの画像強調内視鏡により小さな早期癌の発見が容易になってきております。しかし、さらに早期癌を検出しやすくするための方法への模索は続いております。例えば、癌が内視鏡画面で「光って」いれば、おそらく誰もが癌の認識が容易になるのではないでしょうか。

本学医学系研究科生体情報学教室が開発したオリジナルの有機小分子蛍光プローブは、「内視鏡画面で癌が光る」という夢を現実の物にしてくれるかもしれません。この蛍光プローブは、癌に直接ふりかけることで癌部分のみに反応し、強い蛍光を発することにより癌部のみを鋭敏に光らせるというものです(参照:
生体情報学教室ホームページ)我々は、この分野において、生体情報学教室・胃食道外科・大腸肛門外科との共同研究を行っており、「癌が光る内視鏡」の実現へ向け検証を進めております。

Rapid and sensitive detection of early esophageal squamous cell carcinoma with fluorescence probe targeting dipeptidylpeptidase IV.
Onoyama H, Kamiya M, Kuriki Y, Komatsu T, Abe H, Tsuji Y, Yagi K, Yamagata Y, Aikou S, Nishida M, Mori K, Yamashita H, Fujishiro M, Nomura S, Shimizu N, Fukayama M, Koike K, Urano Y, Seto Y.
Sci Rep. 2016 Jun 1;6:26399.

(辻陽介)
 
食道ESD検体に蛍光プローブをふりかけ、蛍光写真を撮影するとくっきりと癌が浮かび上がって見える。

artificial intelligenceによる胃癌の内視鏡画像診断システムの構築に関する研究

消化器内科の外来検査あるいは入院検査治療をうけられた患者さんへ

「消化器内科における診療記録を利用した後ろ向き解析研究」への協力のお願い

消化管チームでは、内視鏡を用いて様々な疾患に対し診断と治療を行っております。当科が取り扱う疾患の内視鏡診断や併存疾患との関連、リスク因子の同定・評価、あるいは内視鏡治療の安全性や有効性、短期・長期予後などを評価し、診療および医学の発展に役立てることが重要と考えています。

このような問題を解決するために、当科では画像、血液検査等の臨床データを外来カルテおよび入院カルテから収集し解析を行い、学会論文等で発表しております。

【研究課題】

artificial intelligence (AI)による胃癌の内視鏡画像診断システムの構築に関する研究」

倫理委員会初期承認日: 20181129

 審査番号:2018070NI   

【研究機関名及び本学の研究責任者氏名】

この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示すとおりです。

研究機関 主実施施設:東京大学医学部附属病院・消化器内科

研究責任者 消化器内科 特任講師 辻陽介

担当業務  データ収集・匿名化・データ解析・データ保存

【共同研究機関】

研究機関 東京大学大学院情報理工学系研究科 原田達也 教授、黒瀬優介 助教
担当業務 データ解析・データ保存

【研究期間】

 当院倫理委員会の承認後、2027331日まで

【対象となる方】

2009年41日~2022731日の間に、東京大学医学部附属病院にて上部消化管内視鏡検査が行われ、胃癌と診断を受けられた方。

【研究の意義】

本邦では胃癌の罹患率は高く、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は低侵襲かつ根治的な治療として普及しており、その適応は病変サイズ・組織型・深達度・潰瘍瘢痕の有無によって規定されています。胃癌の深達度診断は、主に内視鏡肉眼所見から判定が行われているため、主観的評価となるという問題があります。近年、artificial intelligence(AI)の発展が注目されており、本研究は、東京大学大学院情報理工学系研究科と共同研究を行い、AI技術を用いて胃癌の内視鏡診断の向上・標準化に取り組みます。胃癌の上部消化管内視鏡検査画像をAIに学習させ、深達度をはじめとした胃癌治療方針決定に関連する因子について、AIによる高精度の診断システムを構築することを目的としております。

【研究の目的】

AIを用いた上部消化管内視鏡検査画像診断システムを構築し、胃癌の深達度を中心とした、胃癌の治療方針決定にかかわる因子の診断精度を評価、向上に努めることを目的とする後ろ向き研究です。

【研究の方法】

この研究は、東京大学医学部倫理委員会の承認を受け、東京大学医学部附属病院長の許可を受けて実施するものです。これまでの診療でカルテに記録されているデータ(臨床情報、内視鏡治療成績、内視鏡所見、病理所見等)を収集して行う研究です。特に患者さんに新たにご負担いただくことはありません。 

【個人情報の保護】

 この研究に関わって収集される試料や情報・データ等は、外部に漏えいすることのないよう、慎重に取り扱う必要があります。

あなたのデータ等(臨床情報、内視鏡治療成績、内視鏡所見、病理所見等)は、解析する前に氏名・生年月日等の個人情報を削り、代わりに新しく符号をつけ、どなたのものか分からないようにした上で、当研究室において研究責任者辻陽介が、東京大学大学院医学系研究科消化器内科のパスワードロックのかかるパソコンまたは院内サーバー内または東京大学大学院情報理工学部系研究科工学部2号館 81A1室の外部からアクセスできないパソコン、または記憶媒体で厳重に保管します。ただし、必要な場合には、当研究室においてこの符号を元の氏名等に戻す操作を行い、結果をあなたにお知らせすることもできます。

★この研究のためにご自分のデータを使用してほしくない場合は主治医にお伝えいただくか、下記の研究事務局まで20221131までにご連絡ください。ご家族、ご遺族による参加拒否の権利などを保障いたします。ご連絡をいただかなかった場合、ご了承いただいたものとさせて頂きます。

研究結果は、個人が特定出来ない形式で学会等で発表されます。収集したデータは厳重な管理のもと、研究終了後5年間保存されます。なお研究データを統計データとしてまとめたものについてはお問い合わせがあれば開示いたしますので下記までご連絡ください。ご不明な点がありましたら主治医または研究事務局へお尋ねください。

この研究に関する費用は、東京大学医学部附属病院消化器内科406研究室の研究費(奨学寄附金等)から支出されています。本研究に関して、開示すべき利益相反関係はありません。

尚、あなたへの謝金はございません。

2022年9月

【問い合わせ先】

東京大学医学部附属病院 消化器内科 特任講師 辻 陽介

住所:東京都文京区本郷7-3-1

電話:03-3815-5411(内線  30232)  FAX03-5800-9522

Eメールでのお問い合わせ:ytsuji-tky@umin.ac.jp

多施設後ろ向き観察研究「胃癌 AI 診断の精度向上」のための研究

消化器内科の外来検査あるいは入院検査治療をうけられた患者さんへ

「消化器内科における診療記録を利用した後ろ向き解析研究」への協力のお願い

 

当院消化器内科では、日本消化器内視鏡学会JED Project、国立情報学研究所がそれぞれ協力しながら行っている多施設共同研究に参加しております。日本消化器内視鏡学会では、いまだに罹患者数、死亡者数の多い胃癌の発見率の向上、および、治療方針を決定する質的診断能の向上を目指して、人工知能(Artificial intelligence; AI)を用いた、胃癌の内視鏡自動診断システムの開発を行う研究を行っております。

 

【研究課題】

多施設後ろ向き観察研究「胃癌 AI 診断の精度向上」のための研究

倫理委員会初期承認日: 20201月15日

審査番号:2019234NI

 

 

 

【研究機関名及び本学の研究責任者氏名】

この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示すとおりです。

研究機関 主実施施設:一般社団法人 日本消化器内視鏡学会

 研究責任者 藤城 光弘

担当業務  データ収集・匿名化・データ解析・データ保存

 

【共同研究機関】

 東京大学医学部付属病院     消化器内科        辻陽介

 国立情報学研究所        コンテンツ科学研究系   佐藤 真一

 日本赤十字社京都第二赤十字病院 消化器内科        田中 聖人

 

担当業務 データ収集・匿名化・データ解析・データ保存

 

【研究期間】

 倫理委員会承認後~2023331

 

【対象となる方】

2009年41日~2019831日の間に、各施設において上部消化管内視鏡検査が行われ、胃癌と診断をうけた20歳以上の方。

 

【研究の意義】

本邦では胃癌の罹患率は高く、胃癌の 見落としを最小限にする努力が求められています。また、胃癌の内視鏡切除術の適応は、病変サイズ・ 組織型・深達度・潰瘍瘢痕の有無によって規定されており、その適応を決めるための正確な診断が重要です。近年、artificial intelligence(AI)の発展が注目され、本研究は、多施設共同で、AI技術を用いて胃癌の内視鏡診断の向上・標準化に取り組みます。

 

【研究の目的】

従来の報告にある胃癌検出感度や、早期胃癌の適応を決めるうえで必要な、病変サイズ(病変範囲)・組織型・深達度・潰瘍瘢痕の有無などの正確な診断が可能なAIの開発を行う、後ろ向き研究です。

 

【研究の方法】

この研究は、東京大学医学部倫理委員会、一般社団法人日本消化器内視鏡学会倫理委員会の承認を受け、東京大学医学部附属病院長の許可を受けて実施するものです。これまでの診療でカルテに記録されているデータ(内視鏡検査で実際の診療で施行された画像および、それに付随する検査・病理報告書に記載された内容)を収集して行う研究です。なお、この研究で得られた情報は、共同研究者である日本消化器内視鏡学会(データ発出側責任者:田中 聖人)、国立情報学研究所(データ受領側責任者:佐藤 真一)へ、患者様個人がいっさい特定されない形で提供させていただき、ともに解析を行う予定です。特に患者さんに新たにご負担いただくことはありません。

 

【個人情報の保護】

 この研究に関わって収集される試料や情報・データ等は、外部に漏えいすることのないよう、慎重に取り扱う必要があります。

あなたのデータ等(内視鏡検査で実際の診療で施行された画像および、それに付随する検査・病理報告書に記載された内容)は、解析する前にあなたの個人情報とは一切連結できないようにした上で、日本消化器内視鏡学会においてデータ発出側責任者田中 聖人が、日本消化器内視鏡学会JED Projectに秘匿されたハードディスクで厳重に保管します。そのため、同意を取り消すこと及び個人の結果をあなたにお伝えすることはできません。

 

 

★この研究のためにご自分のデータを使用してほしくない場合は主治医にお伝えいただくか、下記の研究事務局まで2020331までにご連絡ください。ご家族、ご遺族による参加拒否の権利などを保障いたします。ご連絡をいただかなかった場合、ご了承いただいたものとさせて頂きます。ご本人・ご家族・ご遺族の申し出があれば、可能な限り情報・データ等及び調べた結果を廃棄します。この研究への参加をお断りになった場合にも、将来にわたって各参加施設における診療・治療において不利益をこうむることはありませんので、ご安心下さい。ただし、参加を拒否されたとき、すでに匿名化後であった場合等は、廃棄することができませんのでご了承ください。

 

研究結果は、個人が特定出来ない形式で学会等で発表されます。収集したデータは厳重な管理のもと、研究終了後5年間保存されます。なお研究データを統計データとしてまとめたものについてはお問い合わせがあれば開示いたしますので下記までご連絡ください。ご不明な点がありましたら主治医または研究事務局へお尋ねください。

 

この研究に関する費用は、「日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development; AMED) 臨床研究等ICT (Information and Communication Technology) 基盤構築・人工知能実装研究事業/研究開発課題名:「内視鏡統合データベースと連携する内視鏡診療領域におけるAIプロトタイプ開発と実装に向けたICT基盤整備」研究開発/日本消化器内視鏡学会理事長:井上晴洋」の一環として、AMEDから資金から支出されています。本研究に関して、開示すべき利益相反関係はありません。

尚、あなたへの謝金はございません。

 

 

20201月

 

【問い合わせ先】

東京大学医学部附属病院 消化器内科 助教 辻 陽介

住所:東京都文京区本郷7-3-1

電話:03-3815-5411(内線  30232)  FAX03-5800-9522

Eメールでのお問い合わせ:ytsuji-tky@umin.ac.jp

 

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